祈 り


 今年も1月17日が巡ってきた。いつもは記憶の奥に封印しているこの時の出来事が1年に1回は蘇ってくる。身内には大きな被害はなかったが、多くの患者さんが被災し、亡くなり、動物たちと涙ながらに別の人生を歩まざるを得なくなった。
 避難所となった近くの小学校の教室で、地震の少し前まで全身大火傷の治療をしていた子猫とその飼い主の女性と再会した。子猫は毛も生えてきて布団の中で愛らしい顔を見せてくれた。住んでいたアパートが倒壊したと聞いたが、その後は会う機会もなく、どうなったのか今でも気になっている。子猫はお風呂の熱いお湯に落ちて首から下の皮膚が全部落ちたが、奇跡的に助かった。そうやって命をつないだのに、地震で家を失うなんて。もう20年も前のこと。猫も天寿を全うしているだろうが、飼い主と新しい一歩を踏み出せていたならいいのだけれど。
 小さいことながら深く私の心の中に眠っているこのような想い出。今年も17日のその時間、想いを馳せながら静かに祈りを捧げた。

ク−パー動物病院  http://cooper-net.jp/

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