桜、咲いたけど…


  長く腎臓の病気の治療を続けていた犬が、いよいよ食欲も落ちてきて、とうとう食べることができなくなった。腎臓の病気は悪くなると、吐き気があったりして食事が進まなくなる。大好きなちくわも関心を示さなくなっていた。それでも散歩は大好きで、近所の方たちにも可愛がられていた。
 今までは点滴の回数を増やせば何とか持ち直していたが、今回はそうはいかないようだ。しかし、飼い主は今年の夏まで頑張れるかなと期待している。私は「桜の頃にはお別れになると思う」と気力を振り絞って飼い主に伝えた。始めは信じられなかった飼い主。しかし、桜が散る頃、静かに旅立っていった。
 後に飼い主に、本当に桜の時に逝ってしまったわ…と言われた。同じ頃やはり闘病中だった数頭の老衰の犬猫たちが旅立っていった。
 桜は私達にとっては特別な花だ。まして桜の季節に家族を見送った飼い主にはなおのこと。私も桜を見ると、桜とともに旅立っていたあの子たちをきっと思い出すよ。

ク−パー動物病院  http://cooper-net.jp/

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