百万回のありがとうを


 彼は若かりし頃、いわゆるやんちゃなテリアだった。そのあたりでは彼の散歩時間を外して散歩に出る犬たちがいたくらいだ。一体いつになったらおとなしくなるんだろう…5歳? 10歳? なんて飼い主と話しているうちいつしか18歳の高齢犬になっていた。
 18歳になっても活発だったが、やはり彼にも老いが訪れていた。眠る時間が長くなりほとんど何も食べなくなってお気に入りのソファの上で過ごす時間が長くなった。そうなってみたら、嫌われ者かと思われていた彼の元にお見舞いに来てくれる犬友達の多いこと。やんちゃくれののいなくなった公園は静かで寂しくなっていた。
 母と犬の介護を一手に引き受けた妹と毎日仕事に出る姉。姉はその時に立ち会えないかもと思っていたが、ある日の早朝、出勤前の姉と妹に見送られて彼は静かに旅立っていった。小さなやんちゃ坊主は、飼い主に充分心の準備ができるその日までずっと待っていたのかもしれない。そんな風に思える最期だった。

ク−パー動物病院  http://cooper-net.jp/

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