地球人

第11回

シューベルトで音楽祭

'93からシューベルト全600曲のリサイタルを続けていた当時、「丹波とウィーン姉妹提携」の新聞記事を見つけました。丹波育ちの僕と、ウィーン生まれのシューベルトの浅からぬ縁を感じ、「丹波の森でシューベルトの音楽祭を開催したい」と考え、何度も地元へ足を運びました。

音で満ちる丹波の秋

阪神大震災の'95秋に、丹波の森公苑のオープン・プレ・イベントとして「丹波の森国際音楽祭シューベルティアーデたんば」が開催されました。3年限定のはずが、年々盛り上がりを見せ、18年連続の堂々たる音楽祭に成長しました。篠山市・丹波市の全10町では、町内の実行委員が企画した「街角コンサート」が開催され、丹波の森全体が音楽で満たされます。

僕は初年度から、総合プロデューサーとして関わっていますが、今年からは音楽監督に就任しました。僕自身も出演者の一人として、丹波の森を飛び回っています。

音楽で繋がる縁

「丹波の森国際音楽祭シューベルティアーデたんば」では、毎年、海外からアーティストを招いています。携帯やメールで簡単に連絡が出来なかった頃は、ドイツ語や英語と格闘しながら、ファックスを駆使していました。

演奏家探しでは、素敵な出会いもありました。プライベートの旅行中、ウィーンの路上演奏中にスカウトしたバヤーン奏者のサーシャ氏は、この音楽祭を通じて十年来のお付き合いになります。今年は、留学時代の友人が所属している、オランダの男声合唱団にも出演していただく予定です。

音楽の持つ力に引き寄せられ、人が集まり、そこでまた新しい出会いがある。そんな場所を作りたいという願いを、生まれ故郷の丹波で叶えることが出来ました。これもシューベルトが引き合わせてくれた縁だと、思わずにはいられません。

集い、繋がり、広がる

テノール歌手として、僕は「歌う人」です。演奏会では「歌う人」と「聴く人」双方向だけの繋がりと思われがちですが、シューベルト歌曲連続演奏会を7年間続けてみて、聴く人たちがシューベルトで繋がってゆくのを感じます。人と人が繋がれば道は広がるのだと気付きました。

音楽を通じて人が集まり、人と人を繋ぐ場所を作る。これが僕のライフ・ワークとなっていきます。

次回に続く