人、街、酒

第2回

ギター一本抱えて街から街へ。音楽で人と人をつなぐ桑名晴子さん。出会う人、自然、モノについて語ります。


 夏休みの風物詩「キャンプ」。晴子さんは、毎夏伊勢市のひもろぎの里で行われる子どもキャンプに参加しています。ここでは50人分ほどの食事の世話もしますが、大勢の家族や従業員の食事づくりをしてきた晴子さんにとってはお手の物。
 「私の幼稚園時代までは、豊中市の長屋に住んでいました。父親が頑張って商売を広げ、一族が集えるように、帝塚山の大きな家に移ったので、絶えず人の出入りがありました。兄も人を呼んで来るのが好きでしたから、大人数分の食事を作るのは得意なんです。逆に少人数だとつい作りすぎて…(笑)。母との二人暮らしになって、ようやく最近、少人数の用意にも慣れてきました。

 似ている人が集まる

 晴子さんの人を惹き付ける魅力は、人をもてなすことで育ってきたのかもしれません。
 「結局、似た感性や同じ方向性を持った人が集まりますね。表現方法は違っていても、同じ匂いがするというか、互いに解り合える人たち同士が繋がっていきます。例えば、CDの販売一つをとってみても、大手の販路に乗せた方が確かな利益は上げられるかもしれないけれど、本当に私や兄の音楽を愛してくれている人にお任せするほうが、真に求めている人に伝わっていくと思うようになりました。

 歯を食いしばらないといけないことは向こうからやってくる

 私は、無駄がないようにするタイプの人間なんですが、最近になって「無駄があってもいいかな」と思えるようになってきたんです。若いころ一緒に音楽をやっていて一旦は袂を分けてしまった人と再会してみると、互いに「けっこういい音楽してるやん」と言えるものがあったりします。一見、無駄や失敗と見えたことも、後には、結局は全て必要なことだったのだと思えるということは、「無駄はあっていい」と。全てに頑張る必要もないですよね。第一、歯を食いしばらないといけないことは、黙ってても向こうからやってきますし。兄のこと、東北のこと、福島のこと…。「なんで今なん?」と天を仰ぎたくなるようなことがやってきた時、立ち向かえる力を備えておくことの方が大切だと思うのです。


つづく


バックナンバー