別れの詩


 その老猫と出会った時、もうすでに痩せ細って腎不全の末期だった。今にも寿命を全うしそうだったが、予想以上に小さな体で頑張りぬき、最期は飼い主の女性に見守られて自宅で旅立った。後に飼い主が挨拶に見えた時、この猫の最後の頑張りが目に焼き付いて忘れられずすごく辛くて・・・と涙された。私たちにとって穏やかに見えた旅立ちであっても、命の終わりに接する機会の少ない人には、特に15年以上生活を共にした飼い猫ならなおのこと、違う感じ方があるのだとその時気づかされた。
 ペットを失った時には、心にぽっかり空洞ができたようで、その中には悲しみしか見つからないが、時間が経てば遠い過去の中から楽しかった思い出を見つけることができる。そうして心の空洞に今度は懐かしい思い出をいっぱいに満たして、人は哀しみを乗り越え、その思い出も自分の一部として生きていく。別れは辛い。でも限りある命だからこそ愛おしい。

ク−パー動物病院  http://cooper-net.jp/

バックナンバー