人、街、酒

第12回(最終回)


辰馬本家酒造株式会社の第15代当主・辰馬章夫さん。西宮商工会議所会頭として3期目の活躍中です。

 西宮商工会議所は、昨年創立70周年を迎えました。式典はもちろん、2800に上る会員相互の親睦交流を図る事業、内外に西宮の産業の情報発信をし、ビジネスチャンスを創出する事業など記念事業も多く、準備期間も含め、辰馬さんにとっては、多忙な日々が続きました。


街のための会議所


 会頭職は前会頭の残期から務め、今年で丸10年になります。西宮の自然の恵みに抱かれ、江戸時代の昔より郷土に育まれてきた地場産業の一員として、常に感謝の気持ちを忘れず、ご恩返しの奉仕に微力を捧げています。でもそろそろ馬力のある若い後継者へのバトンタッチを願っています。

 会議所会員の女性会や青年部には、種々の事業の大いなる推進力になっていただいておりますし、職員も若い生え抜きや女性職員が活動してくれていますので、地元の商工業発展のために機動力を発揮していけるでしょう。


日本人の心


  最近、日本人には日本が足りなくなっています。しかし、やはり日本人のDNAには、和の心が宿っているのです。日本人の美しい精神文化ですね。

 古来、日本人は自然への尊敬・畏怖を持ってきました。山、岩、木など、自然にあるものを崇め、ご神体として祭ってもきました。身近なところに神が宿ると信じてきたんですね。酒は神にささげ、神との和合をはかるものとして酌み交わされてきましたし、季節の行事食は密接に神と繋がっています。日本酒で乾杯しようという運動は、単に日本酒の売上を伸ばそうという日本酒メーカーの目論見からではなく、古来から大切にしてきた日本の食文化に流れる美意識を継承し、日本人の心のルーツを意識していこうという願いから広がっています。

 長く続くものは、根がしっかりしていますね。時代の流れの力で少々揺らぐことがあっても、確実に根を下ろしているものは強いのです。そして、その根は逆境によってさらに強くなります。昨年創業350周年を迎えた辰馬本家酒造ですが、「みんな長生きして400周年も同じメンバーで迎えよう」と言っています。食文化を支え、街づくりに関わりながら、これからも西宮の進化を見守っていきたいと思います。


(完)


●一年間の連載におつきあいいただきまして、ありがとうございました。今後のご活躍とご健康を祈念いたします。
●来月号からは、「紙ふうせん」の後藤悦治郎さん・平山泰代さんのお二人にご登場いただきます。


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