「さらっていってよピーターパン」、「飛んで孫悟空」、「三匹の子ぶたのトンチンカン」と、毎年12月は芸術文化センター阪急中ホールで、親子を楽しませてくれている兵庫県立ピッコロ劇団。今年は、歌人・俵万智さんの書き下ろしによる「うそツキ、大好き、かぐや姫」が上演されます。劇団部制作の田房さんを訪ねました。

 演劇の世界にはいつから?
 もともと演劇を目指していたわけではなくて、学校卒業後は、幼稚園教諭を勤めたんです。4年間勤めた後、高校時代の恩師から、ピッコロシアターの仕事を紹介されて転職、演劇学校の担当などに就きました。
 ピッコロ演劇学校は、ピッコロシアター開館5周年を記念してできた学校です。最近は「ワークショップ」等で、体験の場を作っている施設も多くなりましたが、当時は画期的な試み。現在でも公立の劇場付属の学校は、全国でも珍しい存在です。他にもピッコロシアターは、舞台技術学校や県立劇団など事業を拡大していましたが、自分にできることは、受付事務とか接客業務くらいのイメージしか持っていなかったんです。それが、今では劇団の制作にどっぷり。(笑)


 今回の「…かぐや姫」は、「うそ」がテーマになってますね。
 大人は子どもに「うそをついちゃいけません」と言いますよね。でも、なんでもかんでも、むき出しに本当のことを言ってると人を傷つけることも起きますね。「うそ」にもいろいろあって、時には相手を思いやるうそも必要。お話は、うそツキという月からやってきたかぐや姫が現代の少年の部屋にやってくるところから始まるのですが、心と心が抱き締めあっているような優しさのあふれる物語になっています。作者の俵万智さんは、ご自身が5歳のお子さんのお母さんでもあって、「良くないうそになるのは、そのうそをついている人の心が良くないのです。今はすぐに理解できなくても、子どもたちが『あの時の劇で言ってたことは、このことだったんだな』と成長していくうちに感じてほしい」とおっしゃってます。少し年長のお子さんなら、言葉や人の心について考えるきっかけになるでしょうね。


 俵万智さんの書き下ろしとあって注目されていますね。
 竹取物語を熟読された俵さんが、設定を現代に置き替え、演出の平井久美子を中心に劇団員一同で練りに練ってお届けする「新しいかぐや姫」になっています。俵さんの美しい言葉とオリジナルの音楽が素敵に重なって、8月の公演では、子どもに付き添って来た大人が舞台にのめり込んでおられました。自分の感情をステージと一体にして遊ばせながら、楽しんでいただきたいですね。
 公演は、12月26日(土)15時と翌27日(日)11時・15時の計3公演です。たくさんの方のご来場をお待ちしています。



田房加代さんプロフィル

●大阪成蹊女子短期大学卒業
●1984年 ピッコロシアターに就職。
●2003年 兵庫県立芸術文化センター推進室へ異動。
●2006年 ピッコロシアターへ異動。劇団部に配属